「痛い、痛い~!ううーんっ!!」


「いきんじゃ、駄目ですってば。
子宮口が陣痛発作時で8センチ開いています。赤ちゃんの入っている胎包も降りてきてます。もう少しですね」


時田さんは相変わらず冷静。
騒ぐ私の頭をよしよし撫でてくれる部長は嬉しいんだけど、痛すぎて感謝も労いも出てこない。


「ああ~、もう止めたいよ~っ!痛い~!」


「頑張れ!ポンも頑張ってるぞ!」


「それはそうなんですけど~っ!ううーっ痛いーっっ!ううっん!」


「一色さん、いきみ逃(のが)しの呼吸法を思い出してくださいね」


お尻をぐりぐり押しながら時田さんが言う。


「忘れちゃったよ、そんなの~!」


「ふーと長く吐いて、最後にうんと軽く息をつきます。ここで、少しだけ力を入れて結構です」


そういえば、そんなこと言われたような。
ヒッヒッフーという有名なアレじゃないんだと思った記憶があるような……。