部長は優しく微笑んだ。
その笑顔は今までのイケメンスマイルではあるんだけど……、
なんだろう。

安心感、
包容力、
不思議な充足。

そんなものを感じる。

そっか、この人も着実に父親になる準備をしてるんだ。
親として待つのも私ひとりじゃない。
二人一緒。


「陣痛が来るまで、夜はあちこちデートしよう。ポンとは行けない店に行っとこう。とりあえず、明日は廻らない寿司でも食い荒らしに行くか」


「太っちゃいますよ。私、あと1グラムも増えらんないんですから!」


「日中、運動してるだろ。それで帳尻合わせろ」


「そんなぁ」


悲鳴をあげてみたものの、
それは拒否ではない。


頼もしくて優しい一色禅という男。

私、この人と結婚して良かった。
この人の赤ちゃんを産めるのが嬉しい。


「じゃ、お寿司の次は江戸前の穴子天丼が食べたいです」


「言ったな?覚悟しろよ。明日は日曜だから、どっちも行くからな」


私たちは顔を見合わせ笑い合う。


ありがとう、ゼンさん。

私の旦那さん。

私はあなたの子どもを授かって幸せです。