私は涙をごしごし拭って言った。
泣いてばっかりだ、私。

部長が私に近付くと、手を差しのべてくる。


「佐波、ちょっとデートしよう」



部長は私の手をとり、駅の方向に歩き出した。
駅までは近いのであっという間に着いてしまう。

部長は駅前のコーヒーショップに入った。
22時まで営業の店内は、平日の夜ということもあり客はまばらだ。

禁煙席に並んで座る。
私はアイスミルク。
部長はアイスコーヒー。


「夜のコーヒーショップって独特だと思わないか?」


部長がなんでこんなところに連れてきたのか、私にはまだわからない。
ただ、オレンジの照明に涙の跡が目立たないように目のまわりを拭き直すだけだ。


「飲み屋も高い飯屋も、赤ん坊を連れていけるところじゃないよな。このコーヒーショップだって、禁煙席なのにタバコくさいし」


「はぁ」