「せっかく、静かに待つ覚悟……決めたのに」


ベンチに腰掛け、私は呟いた。

昼間我慢した涙が、膝に置いた手の甲にぽたんと落ちる。


「早く、出てきてよう。ポンちゃん……」


待つよ。
きみが出てくるまで。
そのつもりだよ。

でも、ママ、きみに早く会いたいんだ。

待ちきれないんだ。
我慢できないんだ。

美保子さんみたいに、早くきみを抱っこしたいんだよ。
おっぱいをあげたいんだよ。


切なくて、たまらなく悲しくて、私は泣いた。

ひとりぼっちで泣いた。
一番近くにいるはずのポンちゃんが遠くて、なんだかとても心もとない。


「佐波」


10分もしないうちに部長が迎えにやってきた。

走り回って探したのだろう。
部長のTシャツは汗で肌に貼り付いている。


「心配しなくても……遠くになんか行かないですよ」