「味のある出来でわるうございましたね」


「おい、変な意味にとるな。初めて作ったんだから、誰だってあんなもんだろ」


「フライング受診してわるうございましたね」


「言い方が悪かった。『病院騒ぎ』じゃないよな、うん」


「お産まで、刺繍の時間がたっぷりとれそうでわるうございましたね!!」


「佐波!」


部長の声を背中で聞いて、私は再び家を飛び出した。

妊娠中二度目の家出だ。

しかし、今回はスマホしかない。
そして、今にもお産が始まるかもという期待と不安で遠出はできない。

家の周囲を無目的に歩き回った。

ぐるぐるぐるぐる歩く。

効果音はズカズカというか、今の私の体型だとノシノシ。

行き場のない私はマンション近くの小さな公園に落ち着いた。
滑り台とベンチしかない小さな公園だ。