産む力。


赤ちゃんを外の世界に送り出してあげる力。

赤ちゃんをこの世に産んであげる力。


運動して、食事管理して、
そこそこ頑張って妊婦してきたつもりだったけれど。

私、この10ヶ月で『産む力』をつけられなかったんじゃなかろうか。

それとも、もともと私には備わってなかった?

成り行きで妊娠しちゃった私には、産む資格なんかないの?

だから、陣痛は起こらないし、起こってもポンちゃんが出てこれる陣痛じゃないんだ。


「一色さん」


枝先生が、私の前にぺたんと座った。
普段なら、スタジオの片付けや、他のお客さんのお見送りに忙しい枝先生なのに。


「産む力ってあると思う?」


「……あると思います」


自然と私の声は涙声になっていた。

どんどん惨めな気持ちになっていく。
情けない。
私じゃ、ポンちゃんを産んであげられないかもしれない。