目の前でくーくー眠る赤ちゃん。
薄い皮膚、ぽわぽわの髪の毛。
ちいちゃい手はぎゅっと握られている。


「かわいぃ……」


思わずため息みたいに漏れた言葉。

横で美保子さんがうふふと笑った。


「ありがとう、佐波さん。純くん、ほら褒められたわよ」


美保子さんはベビーベッドで眠る赤ちゃんの頬に右手の甲をくっつける。
赤ちゃんはよく寝ていて目覚めない。


「お名前、決まったんだね」


「ええ、『純誠(じゅんせい)』って」


美保子さんは嬉しそうに微笑んだ。


39週3日。
今日、私は退院したばかりの美保子さんの家に赤ちゃんを見にきている。