部長は息を吸い込んだ。
それから、続けて話し出した。


「おまえと暮らすうちに、俺はおまえにすごく感謝を感じるようになった。俺の子を守り、育ててくれているおまえ。間抜けで適当なクセに、変に真面目で真剣で。泣いてみたり、怒ってみたり忙しくて情緒不安定で」


「え?情緒不安定ですか?私」


思わず話の腰を折ってしまう。
自分ではそんなつもりなかったけれど、
そんな面倒なヤツになってた?


「妊娠中ってこともあるんだろうけど、おまえが騒いでるのを見て、意外だった。部下であるおまえは、結構冷静だったからな」


部長はふふっと少し笑った。
それから、また真剣な表情に戻る。


「バタバタ怒ったり、泣いたりしてるのが俺やポンのためだと思うと嬉しかった。
最後には必ず笑顔に戻るだろう。それが俺を安心させてくれた。おまえは明るくて、誠実で、俺との生活を大事にしてくれる。約束度どおり家族になろうとしてくれている。

それで、わかった。
俺は部下として仕事をこなすおまえにも、同じように感謝していたけれど、
今感じる気持ちはとっくにそれを超えているって。
ようやく気付くことができた」