「いいよ」


私は自分でも驚くほど、あっさりと言った。


「別れたげる」


「ええんか?佐波。俺はおまえにボコボコに殴られる覚悟で今日来たんやで?」


私、男をボコるタイプじゃないだろ!


「いいよ、あんたをほったらかした私も悪いもん」


私だって後ろ暗いことがあるし。
とは、さすがに言わなかったけど。


「ほら、お蕎麦来たよ。食べよ!」


私は泣きそうなリョーヤの肩をバンバン叩いて言った。


「佐波、ごめんなぁ、ホントごめんなぁ」


「ひとつだけ、ハルカちゃんて女、結構食わせもんだからね。あんたが捨てられないように気を付けるんだよ!」


幸せになってよ、リョーヤ。

そう願うのが、
まだ、先も見えない私からの罪滅ぼしで餞だよ。