「ゼンさん、お母さん、覚えてますよ」


私は言った。
それから、高い位置にある彼の頭を抱き寄せる。


部長は私の身体に腕をまわし、顔を首筋に埋め、声を殺して泣き始めた。


親子の邂逅。
奇跡のような一瞬。

まるでポンちゃんが出会わせてくれたみたいだ。


来て良かった。

本当に良かった。


私たちは互いの身体を支えあうように寄り添い、施設を後にした。