それからお母さんはぺたりと地面にひざまずいた。
何事かと焦った私をよそに、お母さんは私のお腹に耳をつける。

中の音を聞きたいようだった。


「私もね、男の子を産んだの」


お母さんが一転、静かな声音で言った。
私は様子を伺い知ろうと顔を覗くが、よく見えない。


「禅って言うの。今、1歳なのよ。すごく可愛いの。あの子、将来はハンサムになるわ」


お母さんは満足したように顔を離し、職員さんに支えられながら車椅子に戻った。


「早く、早く、禅に会いたいわぁ」


待ちきれないと言わんばかりに足をバタバタと動かす。



ああ。

私は涙が出そうになった。

ああ、ゼンさん。
聞こえていましたか?