するとお母さんが急に立ち上がった。

目に精気が宿り、一瞬彼女の顔は精神を取り戻したかに見えた。

しかし、違った。

お母さんはあくまで遠い世界にいながら、私に反応したのだ。
正確には、私のお腹のポンちゃんに。


「あらぁ、あなた赤ちゃんがいるの?」


お母さんは大きな声で言い、私に歩み寄る。
そして、私のふくらんだお腹を撫で始めた。


私は一瞬面食らったけれど、すぐに
「はい」
とうなずく。


「今、8ヶ月なんです」


「あらあらあら、大きいお腹」


お母さんは話を聞いているのかいないのかわからないタイミングで話す。
手は無心に私のお腹を撫でている。