施設の駐車場に車を停め、面会の旨を受付に伝える。
てっきり居室に案内されるのかと思ったら、
お母さんは今、中庭にいるらしい。


途中で案内を断ると、職員の女性が言った。


「一色さん、今日は大変落ち着かれてますので、もしかするとお話ができるかもしれませんよ」


中庭は建物に四方を囲まれた場所にあった。
文字通りの中庭だ。

入所者の脱走を防ぐ構造のようだった。
この施設には高い塀やフェンスもある。

屋外に出ると草木の間に、何人かの年配の入所者が見えた。
近い数の職員もいる。
皆、花を眺めている。咲き始めたばかりの薔薇だ。


「いた。お袋だ」