部長は横目で一瞬私を見た。

暫時、沈黙が流れ、部長が答えた。


「ありがとう、佐波」



豊田で高速を降り、部長の運転する車は西へ向かって更に走る。

高速を降りてから、一時間。
部長の実家である叔父さん夫妻のおうちに到着した。

叔父さんのお宅は聞いていたとおり、大規模に農業を営んでいて、
大きな日本家屋の裏は山裾までの広い土地が畑だった。


お母さんに会いに行くことは伝えてある。

簡単に挨拶を済ませ、お茶をごちそうになると私たちは出発した。
叔母さんからは、夏物のパジャマを届けてくれるように言付かった。


お母さんが入所する施設まで20分。
再びハンドルを握った部長の表情は固く、私はまだかける言葉が決まらなかった。