「その事件をきっかけに俺はお袋を完全預かりの施設に入れた。高齢の叔父夫婦にこれ以上迷惑もかけられなかったしな。
お袋は調子がいい時はニコニコ笑っているだけなんだが、妄想が暴れ出すと徘徊したり奇声を上げたりする。
そんな姿を見るのは忍びなかった。俺は余計故郷に近付かなくなった。

……どうだ?呆れただろう?」


部長は自嘲の笑みを浮かべた。


「母親を捨てた男が、父親になろうとしている。
だが、お袋も自分の中の息子を消去して子どもに還ってしまったわけだから、これはあいこというやつかな」


「私は部長がお母さんを捨てたとは思っていませんよ」


私はきっぱりと言い切った。



「遅くなりましたけど、これから結婚の挨拶に行くんですから」