部長の語り口はあくまで冷静で、ただの説明のようだ。
感情を挟めるほど整理できていないのかもしれない。
「俺が大学に入って上京すると、お袋の体調がおかしくなっていった。最初は物忘れ。居酒屋の注文が覚えられなくなって、野菜の数を間違えて書くようになって。ある日、野菜を農協に卸しに行って帰り道がわからなくなった。
それで、病気がわかったんだ。
俺は、大学を出たら地元に戻ろうと思った。
お袋の面倒を見ながら、役所みたいに安定した職につこうと。でも、社長と会って、やりたいことができてしまった。
お袋には俺の気持ちがわかったんだろうな。自分の病気を理由に息子を束縛したくなかったんだ。
『頑張ってこい』と言われ、俺はお袋の気持ちに甘えて仕事を取った」
社長の言葉が脳裏を過る。
罪悪感。
病気のお母さんを置いて仕事をとったこと。
それが、ずっと彼を縛っている。
感情を挟めるほど整理できていないのかもしれない。
「俺が大学に入って上京すると、お袋の体調がおかしくなっていった。最初は物忘れ。居酒屋の注文が覚えられなくなって、野菜の数を間違えて書くようになって。ある日、野菜を農協に卸しに行って帰り道がわからなくなった。
それで、病気がわかったんだ。
俺は、大学を出たら地元に戻ろうと思った。
お袋の面倒を見ながら、役所みたいに安定した職につこうと。でも、社長と会って、やりたいことができてしまった。
お袋には俺の気持ちがわかったんだろうな。自分の病気を理由に息子を束縛したくなかったんだ。
『頑張ってこい』と言われ、俺はお袋の気持ちに甘えて仕事を取った」
社長の言葉が脳裏を過る。
罪悪感。
病気のお母さんを置いて仕事をとったこと。
それが、ずっと彼を縛っている。