部長は無表情に言葉を続ける。

まだ、戸惑いが感じられた。
私は打ち消すように言う。


「重いなんて言いません。私のお義母さんの話なんですから」


「少し、俺の親の話を聞いてくれるか?」


部長が前を見たまま言い、私は「はい」と力強く返事した。


「俺は親父が55歳、お袋が25歳の時の子だ。
30も年が離れているのに、親父は初婚で、二人は恋愛結婚だった。

坊さんだった親父は俺が10歳の年にガンで死んだ。
寺は新しい住職に任せ、お袋と俺は叔父の家に身を寄せた。お袋は叔父の農家を手伝い、夜は近所の居酒屋の店員をして俺を育ててくれた。
親父はそこそこ金を残してくれたようなんだが、お袋はそれを手付かずで俺に渡したかったみたいだな」