「あんまり、妊婦さんに進んでしたい話じゃないんだけどね」


天池さんは前置きする。


「時田さんは去年、看護学校で助産師資格を取ったんだけど、実習で妊婦さんの死亡案件を見てるの」


「え?」


「彼女がお産も取り上げる予定の妊婦さんだった。バースプランも話し合ってね。仲良くさせてもらってたんですって。その妊婦さんが緊急搬送されてきた」


私は我が事のように心臓が鳴り出すのを感じた。
さっき感じた恐怖が蘇るようだ。


「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)。

出産より先に胎盤が剥がれてくる病気でね。原因がわからず起こることもあるの。赤ちゃんもママも死亡率が高い。
緊急帝王切開が行われたけれど、ママの方は出血が酷すぎて助からなかった。唯一の救いは、赤ちゃんを救命できたこと。

後日、時田さんは彼女の旦那さんにお礼を言われたんですって。妻の最後の友人でいてくれてありがとうって」


私は言葉を失った。

そりゃ、彼女たちは生と死の現場にいるわけだけど、

そんな経験、しんどすぎる……。