彼女は打てば響くようなスピードで答える。


「本当に、よかった……」


彼女は呟いて、一礼すると部屋を出ていった。
その瞳が涙で濡れていたのを、私は見逃さなかった。


「あの……」


私は処置室や裏で作業中の別な助産師さんに声をかける。
看護師長で助産師の天池さんが
「はいはい」
とやってくる。


「さっき、時田さんが……」


泣いてたみたい。
私、何かしちゃったのかな。


天池さんは首を横に振った。


「一色さんのことじゃないのよ。気にしないでね」


「でも……あの……」


あんなツンツン女子が、親身になって手を握ってくれたり、涙を見せたり。
おかしいじゃん。
気になるよ。

私が食い下がるので、天池さんは作業の手を止めて隣の椅子に座った。

部長はがーがー寝ていて、まだ起きる気配もない。