「部長のお名前の由来は？褝でひとえって読むのも珍しいし、あんまり無い名前ですよね」


ついでに聞いてみようと、私は問う。
前から聞いてみたかったし、名付けの参考になりそうだ。


「うちは……死んだ親父が坊さんだったからな」


部長が少し言いあぐねてから、口を開いた。


「え！じゃあストレートに跡継ぎ用の名前じゃないですか！」


私が呑気に答えると、部長は首を振った。


「俺は親父が年いってからの子なんだよ。だから、跡継ぎに育てようとは思わなかったらしい。
この名前は母がつけた。……親父との数少ない繋がりなんだろうな」


部長は口が重そうだ。
私は話題を変えた方がいいような気配を感じる。
慌てて、自分の名前の由来を話し出す。


「私は母から一字もらってます。佐代子の佐」