私はまだ泣いていた。

大事なことを話してくれた彼女の気持ちが嬉しかった。


「美保子さん、私がこれから話すことを聞いたら、嫌な気分になるかもしれない。私のことキライになるかも。でも、聞いてくれる?」


「嫌いになんてならないわ」


美保子さんは新しいお茶をふたつのカップに注ぐ。

それから、誰にも話せなかった私と部長の話を、じっと聞いてくれた。



長くはないけれど、彼女の経験とは真逆の話を終えると、私の想像に反して美保子さんは
「素敵」
と微笑んだ。


「素敵じゃないよ。私は一度、この子の死を願っちゃったんだ」


「状況が違えば、私だってそう思うことがあったかもしれない。……私が素敵だと思ったのは、お腹のポンちゃんが、佐波さんと御主人のキューピッドだってことよ」


キューピッド?
ってあの?
矢を持った恋を叶えるやつ?