マタニティビクスに通いだしてすぐ、他の妊婦さんたちと『羊水検査』の話になったことがある。


『絶対にしない』


その時、美保子さんは決然と言った。
いつも柔らかい口調の美保子さんだから、違和感を感じたっけ。


彼女には、お腹の赤ちゃんのすべてを受け入れる覚悟が、もうできていたんだ。
もし、障害がわかっても、命の選別に当たることは絶対にしない。
強い覚悟がすでにあったんだ。


「ねえ、美保子さん、どうして私にこの話をしてくれたの?
話すの、辛くなかった?」


私が問うと、美保子さんは大きな瞳を優しげにすがめた。


「さあ、どうしてかしら。家族以外、誰にも話したことないの。いつもお友達が来る時は、あのエコー写真も片付けておくんだけど。
でも、なんとなく。
佐波さんとは、ママ仲間として長いお付き合いになりそうだし、話しておきたかった。重い話を押し付ける格好になっちゃってごめんなさい」