「どうだい?順調かな?」
午前中のオフィス。
デスクの間を闊歩していた私は、声に向かって振り向いた。
「社長!」
私に声をかけてきたのは、我が社アプローズ(株)の社長、外丸了司(とまるりょうじ)その人だ。
50代後半で白髪の混じり始めた単髪に、スラリとした体躯。
見た目は紳士然としてるけど、瞳の奥のぎらっとする輝きは、さすが一国一城の主って感じ。
外丸社長が一代でこの会社を興したのは、まだほんの10年ちょっと前の話だ。
小さくとも頼りにされる広告代理店に成長させたのは彼の手腕に他ならない。
ちなみにうちの旦那様、一色褝大部長殿はこの会社の創業メンバー。
なんでも、インターンシップをしている大学3年の時に社長にスカウトされたらしい。
青田買いだね~。