ふと、横を見ると、一色部長が唇を噛み締め、俯いていた。


え?
うそ……でしょ?



その目に涙がいっぱいたまっているのを、
私は見てしまった。



「必ず、必ず幸せにします。佐波さんとお腹の子は」


部長は絞り出すように言った。

演技でも何でもなかった。

この人は、父の涙にもらい泣きしてしまったのだ。



ずっと、怖くて厳しい人だと思っていた。
優しくしてくれるのは、責任からだと思っていた。

でも、この人は、

一色褝という人は、

実はすごく感情豊かな、愛情深い人なのかもしれない。


気付くと私は、お腹を触っていた。


ねぇ、お腹のあんた、

あんたのパパはもしかして

すっごくいい人なのかもしれないね。