父は私たちの前にやってくると、同じように床に膝をついた。

そして、厳しい表情のまま言う。


「佐波は一人娘です」


お父さんも喜んでるってお母さんは言ってたけど……。

まさかお父さんは反対派だったの?
そんなの聞いてない!


私は内心慌てた。
でも、じっと成り行きを見守る。

少しの沈黙を挟んで、

父が再び口を開いた。


「結婚8年目でようやく授かった一人娘です。夫婦二人でやれることはやったつもりですが、いたらぬところの多い娘です。

一色さんの妻として見合うかは、わかりません。明るいだけが取り柄の子ですから。

でも、あなたさえよければ、もらってやってください。
幸せにしてやってください………佐波は……」


そこまで言って、父は嗚咽した。
目尻のシワをつたって大粒の涙がぽろんぽろんと落ちる。


「佐波は……私たちの宝なんです……」


父が、
厳しい表情をしていたのは、

泣くのを我慢してたからなんだ……。



「あらあら早いわよ、お父さんたら。泣くのは結婚式でしょ」


お母さんがお茶を運んできながら、呑気な声をあげる。


お父さんは泣き止まない。
顔を真っ赤にしてぽろんぽろん涙をこぼして。


……泣くの、初めて見たよ。

私の涙腺も緩みそうで危ないったら……。