「いい。実家を仕切っている叔父には連絡した。うちの親父は20年も前に死んでるし、母親は今、体調が悪くて入院中だ。たぶん、式も叔父夫婦が来るだけになるだろう」


そんなものなのかな?
お母様、具合が悪いなら余計に挨拶に行った方がいいんじゃない?
部長だって一人息子なんだし。


でも、この件に関しては部長の口が重いので、私は特に何も言わないようにしていた。


車は高崎インターで高速を降り、実家の方向に向けてぐんぐん進む。
山沿いの少し高くなった土地に両親の住む家がある。

車を降りると、すぐに母が飛び出してきた。


「まーまー、よくいらっしゃいました。遠かったでしょう」


「初めまして、一色と申します。大泉で関越に乗って二時間ほどでした。それほど、かかりませんでしたよ」


部長はすでによそゆきの笑顔。
さすがですよ。
そのコミュニケーション力。