「大和はわたしの幼なじみだよ。同い年の野球少年」

「ふうん、幼なじみ」

「うん、そ。もう半年以上会ってないけどねー」


大和からのメールは、今日の試合の結果報告だった。

今日戦った高校は、過去に甲子園出場経験のある名門校。おそらく今年の地方大会は、この試合が一番大事な戦いになるだろうって、前に大和から聞いていた。


「んん、勝ったんだ。よかった」


短いたった一行の本文。

『今日の試合、勝ちました』の文字。


四角い画面の中のそれを眺めていたら、自然と口元が緩んだ。

きっと今のわたし、最後の1球を投げたあとの大和と、おんなじ表情だ。


大和はいつも、あんまり表情を変えない。小さい頃からそうだ。かわいい顔をしているくせに、常にぶすっと無愛想な感じで。

だけど、たったひとつだけ、大和が思いきり表情を崩すときがある。それが、試合で勝ったときだった。


最後の球を投げ終えて、ゲームセットした瞬間。マウンドの上で大和はいつも、太陽みたいに笑っていた。

チームメイトに向かって。自分の手に向かって。マウンドに向かって。空に向かって。

何度も見てきた。眩しかった。とても。いつ見ても。見られないくらいに。


大好きだった。その顔を見るのが。楽しそうに野球をしている、大和の姿を見るのが。


まだ、わたしと大和の背がそんなに変わらない頃。

いつかふたりの立つ場所が大きく変わってしまうなんて、思いもしないままで、純粋に、こっちを見る大和に手を振った。


今はもう、手は振らない。

大和はこっちを向いてくれるけど、あまりにもその場所が遠すぎる気がして、わたしはいつも、たくさんの人であふれている場所から、たったひとりでグラウンドの中央に立つ大和を、見ている。