だけど、何をしないわけにもいかない。

このままじゃ、また友達の前で変な態度を取りかねない。

ぼくは仲井さんの、イラストに対する気持ちを持っている。


ぼく自身がイラストに興味を持ち続けるのはもちろん、仲井さんがイラストを見たり、話したりすることで、何かしらぼくの心に伝わってくるだろう。


ぼくはその時、過剰に反応を示すかもしれない。

それは、きっと仲井さんだって同じことが言える。


変な意味でぼく達はお互いに意識する。


今のところ解決策はない――だったら。



「あのさ、仲井さん。ぼくと付き合おうか」



「え?」こんな時に何を言っているんだと言わんばかりに、しゃがみ込んでいた仲井さんがぼくを見上げてくる。


悪いけど本気だった。

ぼく達の気持ちは入れ替わったままだ。

解決策も元に戻す方法も分からない今、自分達にできることと言えば、周りに変な目を向けられないように過ごすことのみ。


けど、互いの気持ちを持っているぼく達は意識するだろう。

それがいつ、どんな時に意識してしまうのかは分からないし、どんな行動を起こすのか、それすら予想もできない。

挙動不審な行動を起こした結果、クラスメイトから冷たい目を向けられてしまうことだってある。


それを回避するために、今できることは。


「ぼくと仲井さんが付き合えば、例え変な行動を起こしても、お互いにサポートできるだろ? 昼休みみたいに展覧会に行く、試写会に応募するの話だって、適当に誤魔化せるじゃないか」


「それ、付き合わなくても……できるんじゃないかな?」


「意識しちゃうだろ? 好きとか嫌いとか、そういう意味じゃない意識をさ。どう周りに言い訳するんだよ……実は気持ちが入れ替わった、とか言うの?」


それこそクラスメイトや友達からドン引かれそうだ。



「ぼくから仲井さんに告白したってことにするよ。
実は前から意識をしていたんだけど、ついに我慢できずに告白した。仲井さんはオーケーした。みたいな感じで振る舞っておけば、下手な行動をとってもサポートできるし、それに対しても違和感が少ないと思うんだ。どうかな、この案に乗ってみない?」