「そのこともあって、ぼくはスランプに陥った。ギターを上手く弾こうと思えば思うほどミスをするんだ。演奏は上手くいかないし、四人に白い目は向けられるし、悪循環だった」


「……だからギターが?」


「いや、その頃はまだ好きだったよ。ギターを嫌いになった決定的な出来事は、目標にしていたバザーフェア直前。ぼくは怪我をした」

「けが?」

「ちょっとメンバーと喧嘩をしてね。結果、事故で階段から落ちたんだ」


その日、バザーフェアのステージにエントリーするために紙をもらった。

演奏が近いと実感したぼく達は、クラブの人達に演奏の出来栄えを聞いてもらうことにした。ちょっとしたリハーサルのつもりで。


凡ミスと責められることを恐れていたぼくは、今日だけは絶対に失敗しない、大丈夫と思い込んでいたのだけれど、まさかの事態が起きた。


ぼくの楽譜にはない盛り上がりが演奏で多々あったんだ。


それは四人が打ち合わせの時に勝手に決めた内容。

当然、参加していないぼくは楽譜と演奏の音が違うことに混乱した。


おかげで演奏することができず、途中でギターの弦を弾くことができなくなった。


クラブの人達は不思議な顔でぼくを見ていたし、メンバーはふざけるなって感じで視線を送ってくるし、ぼくはぼくで混乱した。


いやだって、練習していた内容とは違うところがいきなり出てくるんだ。弾けるはずもない。弾いたところで演奏はめちゃくちゃになるだけだ。