「そうだね、大半は県内からだよ。たまに遠くから来る学生もいるけど。ほら、情報科学部とか」
「そっか」
うちの情報科学部の一部の学科は、大手のIT企業との連携が進んでいて。
インターンシップと称して実際のウェブサービスの構築に携われたり、しかもそれで賃金がもらえたりする。
大きな学部ではないけれど、それに憧れて全国からこの大学を目指す人は、多い。
逆に言うと、商学部のようなどこにでもある学部で、私のように遠方から進学してくる学生は、ほとんどいない。
「みずほちゃんは、ひとり暮らし以外に、ここ選んだ理由ってあったの?」
「ジャーナリズムの専門学科がある大学って、意外となかったの、それもあって」
「将来報道関係に行きたいとか?」
「ううん、ただのミーハー」
昔観た映画の、女性キャスターに憧れただけ、とバカまる出しなのを承知で言うと、加治くんがあははと笑った。
「女子アナ志望って感じでも、ないもんね」
「まさか。人前で喋るなんて、考えられない…」
授業中に立って発言させられるのすら、ストレスだったのに。
そう言うと、加治くんが私のグラスを指して、何飲む? と訊いてきた。
あと何口かで空になる、絶妙のタイミング。
午後、駅で待ち合わせをして、バスでショッピングセンターに行った。
スポーツショップやCDショップ、ゲームセンターなんかで楽しんだあと、夕食がてら、道を挟んだ向かいにある居酒屋に入った。
加治くんは、楽しい。
心配していたように、会話が尽きることもなく、というか彼が尽きさせずにいてくれるおかげで、ずっとおしゃべりしていた気がする。
「珍しいよね、商学部の片隅に、報道系の学科って」
「その昔、教養学部が解体された時のなごりらしいよ」
「社会科学的なくくりだったのかな」
「それなら人文学部に入れてもよかったのになあ」
そうだよねえ、とメニューを見ながらあいづちを打って、ジンライムに決めた。