よく晴れた休日。
朝起きて、洗濯をして、掃除をして、ご飯をつくって、本を読みながらゆっくり食べたのに、まだ一日の大半が残っていた。
『あーごめん、今日は親がこっち来るんだわ、視察に』
「またあ、愛娘に会いたいんでしょ。親孝行してきてね」
真衣子を誘って出かけるプランも、ダメだった。
無駄に時間をかけて流しをピカピカにして、カゴに立てていた食器もちゃんと拭いて棚にしまう。
もうこれ以上、部屋の中でやることがないと認めるほかなくなった時、外出しようと決めた。
ひとりって、暇だ。
違うな、家にいた時だって、暇で暇で仕方ない時はあった。
ひとりって、タイミングをつくるのが難しいんだ。
もうすぐご飯だから、その前にあれやっちゃおう、とか、夜はお客様がいらっしゃるから、早めにお風呂に入らなきゃ、とか。
そんなふうに、自分以外の理由で何かのタイミングを決める必要が、全然ない。
いつ何をしてもいい。
そうすると案外、なんでも先に先に手をつけてしまって、ぽっかりと時間があく。
私意外と、家事が得意なのかな?
6畳の部屋を綺麗にしてるくらいで、そんなの調子に乗りすぎかな?
そんなことを考えながら、春らしい明るい色のワンピースに、歩き回るつもりでぺたんこの靴を履いてアパートを出た。
目的地は、決めていた。
私のアパートと、大学の、間の駅。
高架から見える、曲がりくねったメインストリートを囲む商店街が、ひなびてていかにも雰囲気がよさそうで、ずっと気になっていたのだ。
2列しかない改札を出て、車窓からの景色を頼りに商店街の入り口を探す。
駅前の通りから少し奥まったところにそれはあって、想像どおり、なんともいえない枯れた風情が愛らしい、昔ながらの商店街だった。
「見ない子だねえ。新入生?」
「はい、お世話になります」
どうやらここは、同じ大学の学生たちが集まる街らしい。
住民ではないけれど、きっと私はここに通うことになる気がするので、にこやかに声をかけてくれた調剤薬局のおばさまに頭を下げた。