見たくない。
でも確かめたい。
そんな思いが闘う中、おそるおそるとり出して、思ったとおりのものに心が冷える。
知らない人が見たら、すぐにはなんだかわからないだろう。
でも父と兄がいっときアウトドアに凝っていたせいで、見れば私はわかる。
刃も握りもステンレスの。
折りたたみ式の、ナイフ。
ごく軽量のそれを、持つ手が震えた。
なめらかに輝く刃は、しまいこまれていてさえ、一種の恐ろしさを感じさせる。
たたんだ状態だと手のひらに収まるけれど、意味もなく持ち歩くことが禁じられているサイズだ。
日常生活には、絶対に必要のないもの。
――人を探しに
先輩の声が、頭の中で暴れた。
――俺は、よくないことをしようとしてるから
――この子じゃ“目的”は果たせなくない?
よくないことをしようとしてるから。
よくないことを――…
先輩。
もう一度お訊きしても、いいですか。
先輩は、何をしに、この大学に――?
でも確かめたい。
そんな思いが闘う中、おそるおそるとり出して、思ったとおりのものに心が冷える。
知らない人が見たら、すぐにはなんだかわからないだろう。
でも父と兄がいっときアウトドアに凝っていたせいで、見れば私はわかる。
刃も握りもステンレスの。
折りたたみ式の、ナイフ。
ごく軽量のそれを、持つ手が震えた。
なめらかに輝く刃は、しまいこまれていてさえ、一種の恐ろしさを感じさせる。
たたんだ状態だと手のひらに収まるけれど、意味もなく持ち歩くことが禁じられているサイズだ。
日常生活には、絶対に必要のないもの。
――人を探しに
先輩の声が、頭の中で暴れた。
――俺は、よくないことをしようとしてるから
――この子じゃ“目的”は果たせなくない?
よくないことをしようとしてるから。
よくないことを――…
先輩。
もう一度お訊きしても、いいですか。
先輩は、何をしに、この大学に――?