「Bの奴がミスコンの準グランプリ食ったぞー」
「いい加減シメようぜ、あいつ」
「乗った」
賛成、俺も、と次々に先輩たちが手をあげる。
返せたと思ったテニスボールは、ぱさりとネットに絡まった。
「グランプリは?」
「ありゃ去年のうちに済んでるだろ」
「なんでBばっかりかね」
コートの半分でラリーをしていた私は、すっかりそれどころじゃなくなり、ちょっとごめん、と真衣子に休憩を提案する。
「あ、ごめん、みずほちゃんに聞かせる話じゃないよね」
「びっくりしちゃうだろ、こんなネタ」
いやいや、何を仰る。
お嬢様校ったって、校内でこそ監視の目が厳しいためおとなしいけれど、一歩学校を出れば花の女子高生だ。
そういうネタで盛りあがるのは当然だし、合コンだってあった。
私はあんまり、そっち方面には踏みこめなかったけど。
「…B先輩のことですよね? あの、先日の?」
「他にBなんて奴、いないよ」
コートのもう半分でボレーの練習をしていた先輩たちも、やっぱりそれどころじゃなくなったようで、ネットを挟んで会話している。
校舎の狭間に点々とあるコートのひとつで、午後の爽快なテニスを楽しんでいたところだった。
私と真衣子は結局、先日B先輩が合流してきた時に飲んでいたサークルに入った。
雰囲気もよかったし、運営や練習スケジュールがきっちりしていて、でも厳しすぎないところがちょうどよかったから。
ったくさー、と面白くなさそうにひとりの先輩がため息をつく。
「なんなわけ、あいつ。有名どころばっか狙って、そのくせつきあうでもなく、数回で終了なんだろ?」
「別に、女の子と仲いいわけじゃないのにな」
「女たちも、なんだってみんな、Bなんだ」
なんでだ? と全員が首をひねる。
なんでですか? と私も訊きたい気分だった。
B先輩って、そんな人なの?