揺さぶられるたび、声が漏れる。

苦悶の響きなのがわかるらしく、先輩がこわばった私の手を開いて、指を絡めてくれる。

夢中でその手を握ると、温かさに安心した。


自分の身体がどうなってるかなんて、もう全然わからない。

正直快感とは、ほど遠い。

だけど私の上で、先輩が息を乱して。

切なげに眉をひそめて、汗の味のキスをくれる。


無知な私は、終わったタイミングすらわからなくて。

突然、ぎゅっと痛いほど握られた手と、大きく息をついて投げ出すように重なってきた身体に、何が起こったのかと驚いた。


ひっきりなしに窓を叩いていた雨が、いつの間にかぽたぽたと、雨どいを遠慮がちに鳴らすだけになっていた。

少しの間、私の肩先で息を整えていた先輩が身体を起こす。

暗い部屋でもわかるくらい、なまめかしく汗で光る肌。

先輩は、なぜか私のほうを見ずに、脇にどさりと身体を投げ出すと、うつぶせた腕に顔を伏せて。

心底悔いているような、弱々しい声をあげた。



「やっちゃった…」



頭を抱える姿が本気で苦悩に満ちていて、そのあんまりな第一声にも、つい笑った。



「まだ痛い?」

「うーん…よくわかりません、感覚がないような」

「ごめん、俺、初めての子って、初めてで。もう少し痛くないやりかたとか、あったのかも」



申し訳なさそうに言って、片腕で抱き寄せてくれる。

身を任せると、懐に入れた私の額に、愛しむようなキスをくれた。



「何笑ってるの」

「達成感が」

「言うほど何かした?」



意地悪を言う腕を叩くと、先輩がくすくすと笑いながら、汗で冷えた身体に夏掛けを引っぱりあげる。

窓から薄明りが差しこむ部屋で、軽い布団の中で、お互いの身体に腕を回して、目を合わせては笑う。

いつか世界が終わるなら今がいいと思った。