いつからこうなったんだろうって、なんでこうなったんだろうって、ときどき考える。

だけどそんなことしたって今はもう、なんにもわかるはずもない。

人の心が離れるのなんて、単純で、特別なことでもなんでもなくて。

だからこそもしかしたら、始まりも、きっと理由すらも明確な答えはないのかもしれないけれど。


「……最初っからこんな風だったら、よかったのに」


途方もない、まるで行く当てもなくて、後戻りだってできないような真っ暗な道の上にいるみたい。

どうしようもないこんな今が、でも……もしもはじめからこうだったなら、きっと何も思わなかったかもしれないけど。

はじめから何もなかったら。

ひとつじゃなくて、大切じゃなくて。


「でもわたし……知ってるんだ。ちゃんとした家族だったときのこと。みんなが本当に、仲良しだったときのこと」


確かに側に誰かが居た。

大切な人。大好きな人。


世界で一番しあわせなのはわたしだって疑いもしなかったあのとき。

大好きな人たちに囲まれて、夜空の星に手を伸ばした。とても綺麗なその光をこの手で掴みたいと思った。


ずっといつまでも続くと思っていた。

決して届かなかったあの光は、でも、どんなときだってそこで光っているんだと思っていた。


真っ暗に開いた光の穴。それだけで大嫌いなはずの暗闇が大好きになった。


何も掴めなかった手を掴んでくれる人が居た。

大好きな人が隣に居て、大好きな景色を見上げていた。


とても綺麗に見えていた。

そのときのわたしの世界。

確かに綺麗に。何よりも、それは。