わたしはパー。ハナはチョキ。
「やったね、俺の勝ち。ち、よ、こ、れ、い、と」
「えー! なんでー!?」
ハナの前の階段はあと3段だ。つまり一度でも負ければ確実に終わる。もう絶対に負けられない。
「次は勝つから。いくよ、じゃんけんぽん!」
勢いで出した次の手。わたしはパー。ハナはグー。
「わ、負けちゃった」
「よし! ぱ、い、な、つ、ぷ、る!」
「セイちゃんに近づかれた」
「ハナに近づいた。逆転のチャンス!」
別に、負けたからって何かがあるわけでもないし、それは勝ってももちろん同じ。
でもなんとなく、勝負するからには負けたくないっていう、子どもみたいなくだらない意地があるわけで。
何気なく、本当に意味も無く始めたことのはずなのに、いつの間にこんなに熱中しちゃっているんだろう。
こんな、小さな子どもがやるような、単純な遊びなのに。
「セイちゃん勝負だ」
「のぞむところ。せーの、さいしょはグー、じゃんけん」
ぽん。
と、出た手はグーとチョキ。
もちろん、わたしが、グーだ。