「今ね、きみの写真を撮らせてもらってたんだよね。だからごめん、声も掛けちゃったんだけど」

「写真? あれ、やっぱりわたしを撮ってたんだ」

「うん、そう。そのことを言おうと思ってね」


隣いい? と言うハナに、曖昧に頷くと、ハナは少しだけ距離を空けて噴水の縁に座った。

ゆっくりと腰かける動作は男の子の癖に妙に上品で、育ちがいいのかなあ、なんてどうでもいいことを思った。


初対面の人と話すのは、そんなに得意なほうじゃないけれど。人懐こい雰囲気に離れるタイミングを逃してしまったみたいだ。

人に嫌な気を与えさせる前に距離を詰めるのが上手な人ってたまに居る。なんだか、この人は、そんな感じ。

あまりにもわたしと真逆すぎて、それがはっきり、よくわかる。


「…………」


少し薄暗くなってきた景色の中、でも隣にあるその横顔が、なぜだか妙に眩しく見えて、軽く、目を細めた。

ハナが、笑っているみたいに言う。


「不思議な色してたでしょう」


ハナは、さっきまでわたしがしていたみたいに空を見上げていた。

つられて上を向くと、より一層オレンジが濃く広く、ついでに藍色の部分もちょっと深くなっている。


「綺麗だなあと思って写真を撮っていたら、俺と同じように同じ場所を見上げてる子がいてね。でも、なんだか、俺とは違うような気持ちで見てるみたいな顔してたから、ちょっと興味を持って」

「その子って、わたしのことだよね」

「まあ、そうなんだけどね」


ハナの視線がわたしに向く。

そんなふうにさっきも、ファインダーを向けて、そうしたらこっちを見たから、ついシャッターを切った。ということらしい。