ハナが横に座った。俯いた視界の隅で、わたしとおんなじように伸ばされた足。
品の良いブレザーに不釣り合いのスニーカーが、わたしのローファーよりも少しだけ遠い位置に見える。
「セイちゃん、さっきの写真もう一回見せて」
そう言うハナに、わたしはこくりと頷いて振り向かないまま携帯を手渡した。
折りたたみ式の携帯の小さな画面には決して良いものとは言えない写真。
古いせいで画質が悪いし。おかしな色になった空と、葉っぱと、UFOみたいなぼやけたハト。
「あは、これ、UFOみたいだね」
わたしが思ったことと、同じことをハナが言った。
それから「いい写真だね」と、さっきわたしを驚かせたときと同じことも。
「どこがいい写真なの? ちょっと失敗しちゃったくらいなんだけど」
「いいんだよそれで。プロじゃないんだから、出来不出来なんてどうでもいいし、わかんないでしょ。それよりも、自分が撮りたいと思った瞬間を撮ったことがいいんじゃないかな」
「ふうん……よく、わかんないけど」
「いい写真だよ。これ」
ハナから携帯を受け取る。
画面にはまだ、さっき撮った一瞬の風景が写っている。
「……いい写真、かあ」
そんなわけない。それくらいわかるんだ。どう考えたってへたくそなんだもん。センスも情緒もどこにだって見当たりはしない。
だけどきっと、これはずっと消さずに取っておくんだろうな。それくらいのことも、自分のことだもん、ハナには内緒だけどさ、わかっちゃうんだ。