「ハナ、その恰好……」
「ん? うん、今日はちゃんと1日学校行ってたから」
「学校……」
今日のハナの着てる服。それはいつもの私服じゃなくて、胸に校章の付いた、モスグリーンのブレザー。
この辺りじゃ一番お洒落なその制服はこの地域の中高生の憧れでもある。ハナが通ってるっていう、有名私立の立派な制服。
「…………」
ちょっと、見惚れてしまった。
いつものハナと同じなのに、いつものハナと違う雰囲気。きっとハナ自身は何も変わっていないはずなのに、わたしから見れば、ハナの意外で新しい姿を発見って感じで。
なんか。新鮮で。ほんと、いつもと違くて。
「なに、セイちゃん」
ハナが覗いてくる。どきりとして、う、と喉の奥で声が詰まった。
言えない。言えない? 何を? 見惚れてたって。そうかな、言えないかな。
そんなこと、ない気がする。
「かっこいい。ハナ」
ハナが、きょとんとした顔をした。そうだよね、わたし、こんなこと言ったことないしさあ。
でもいつもハナが素直な言葉をくれるから、たまにはわたしだって、素直になってみようかなって思って。
死ぬほど恥ずかしいけど。ハナに変に思われなきゃいいけど。
でも、大丈夫。だってハナ、ほら、くしゃって、笑ってくれてる。
「ありがとうセイちゃん。セイちゃんにそう言ってもらえるの、なんかとても嬉しい」
ボッとほっぺたが焼けるかと思った。
咄嗟に下を向いて隠しても、その動作自体も不自然で、今度こそきっと変に思われたに決まってるんだ。
だけどとてもじゃないけど今はだめ。しばらく顔は上げられそうにないよ。
だって顔中がこんなにも熱い。