ハナはそれをペラペラめくって、白紙のページの先頭を開いた。右の見開きはまっさら、でも左側には何やら色々と書いてある。
ハナは、ノートに差してあったペンを取ると、白紙のところにさらさらと文字を書いていった。
初めに今日の日付。それから。
『素敵なところを発見。秘密なその場所は、セイちゃんが知っている』
その次の行に『猫もいっぱい見た』となんだか小学生の作文みたいな一言も付けて。
「それって日記?」
「んー、日記って言うより、メモかな」
「メモ」
「うん。メモしておかないとね、忘れちゃうでしょ」
わたしの「忘れる」とハナの「忘れる」はきっと全然違うけど、まるでおんなじものみたいにハナは言う。
そうしてパタンとノートを閉じて、「そういえば」と思い出したように声を上げた。
「セイちゃん、この間は制服着てたよね」
「え? うん、学校帰りだったから」
そんな細かいところまで憶えてくれていたんだ。ってちょっと嬉しくなったけど、一瞬考えて、思い直す。
いや……確か、写真に写っていたはず。思い出したのは、たぶんそっちだ。
「…………」
口の飴をころんと転がす。
ハナがわたしの顔を見て少し首を傾げたけれど、さっきからしょっちゅう不機嫌な顔になっているからか、あんまり気にはしてないみたいだ。
閉じたばかりのノートを開いて、さっきとは違う、もう書き込んである部分のページを何かを探すように捲っていく。