「この場所、あの公園の裏手だ」


いろんな場所を回ってきたおかげで今居るところがまったく把握できていなかった。

どうやらわたしたちは随分と道草をしたうえで、またあの噴水の公園の近くまで戻ってきていたらしい。

ハナが、くすりと声を漏らす。


「だったらセイちゃん、憶えていてくれるね?」

「う……うん……」

「あは、よかった」


頷くしかないじゃないか、そんなの。この展開も、その表情もちょっとずるい。

そうしてハナはやっぱり嬉しそうな顔をするから、もうわたしはこの場所を永遠に忘れないように頭の中にインプットするしかなくなった。

ハナとわたしの秘密の場所。


「そうだ、書いておかなきゃ」


呟いて、ハナが突然ごそごそとショルダーバッグを漁り出す。

小さいそれの中にはいろんなものが入っていて、押されてしまった飴玉がころんとひとつ転がり出た。気付かないハナの代わりに掴まえて、ついでに勝手に食べたところで、ハナが何かを取り出した。


「何それ」

「ん? ノート」

「うん、見りゃわかるけど」


ハナの手には1冊のノート。ちょっと分厚い、でもアルバムよりも少し小さいサイズのそれ。

薄い青で塗られた表紙はなかなか見事にボロボロだけど、古いからってわけじゃなく、使い込まれているせいでのボロボロみたいに見える。