わたしはゆっくり首を横に振る。
本当は、その問いの答えはなんとなくわかっていたんだけど、でも、自分で答えるなんてできるはずもなくて、だから、わからないと、首を振った。
ハナが笑う。
「ずっと、きみのこと考えてたんだ」
──トン、と、胸の奥が叩かれた。
こそばゆい感覚。それでいて、じんと何かが沁みてくる感覚。
心と言葉の間に、少しの距離もないみたいだ。
ハナの言葉はだからこそ。
だからこそやっぱり、体の真ん中へんに響いて、もう、きみの目だって、見ていられなくなる。
「考えてたから、憶えてた。公園で会った女の子。忘れたくないなんて、たぶん、思う暇もなかったくらいに」
「何言ってんの……」
「また会えたらいいなって思ってた。そしたら、また会えたね」
最悪だ。
なんでもう雨止んじゃったんだろう。
傘さえあれば隠せたのに。
恥ずかしすぎて見られたくない、こんな、変な顔。
真っ赤になってるに違いないんだ。
他の人に言われたら、鼻で笑っちゃうような台詞。
なんでか知らないけどきみが言うと、おかしいくらいに真に受けて、死にそうなくらいに恥ずかしくて。
それと同じくらい、不思議に、とても、泣きそうになる。