「……ハナ」

「ん?」


どうしてこの人はいつも、わたしとは正反対の顔をしているんだろう。

どうしていつだって、こんな顔ができるんだろう。


わたしは、いつだって、きみとは違う表情しか、できないみたいなのに。



「……なんで、こんな変な顔してる写真が、一番、綺麗だなんて言うの」


こっちを向いたハナの代わりに、今度はわたしが視線を落とした。

手元の写真。わたしの写真。ハナが撮った写真。

ロクな被写体じゃないって、誰が見たって思うようなものだ。

少しも笑ってなんていなくて、見ようによってはただの不機嫌。

わたしには、一番どころか綺麗にだなんて、ちっとも思えはしないのに。

なんで。


「だって、自分の為に、必死で何かを考えてるみたいだから」


ゆっくりと、視線を上げる。

ハナの表情は相変わらずだ。

こんなわたしを見つめて、どこまでも透明に、笑っている。


「は……自分の為とか、すごくかっこ悪いじゃん」

「そう? 俺は、そうは思わないけどな」

「なにそれ……」


唇を噛んで、パタンとアルバムを閉じる。


「……ばかみたい」


呟いたのは、誰に向けてなのか、わたしにも、わからない。