一枚の写真の中。

あるのは、何色ものオレンジで塗りつぶされた空と、ただひとつ、わたしの姿。


風が吹いていたんだろうか。長い髪が後ろに流れてしまっていたから、横顔だけでも、その表情ははっきりと映し出されていた。


……少し、驚いた。

こんな顔をしていたのかって。


あのときのわたし、こんなに、ひどく、苦しそうな顔をしていたのか。


自分では気づきもしなかった。こんな風に表になんて出していないと思っていたから。

だけど自分からは見えていなかっただけで、本当は、こんなにも。


「…………」


じっと、それだけを見てしまっていたせいで、気がつくのはたぶん随分と遅かった。

じっと写真を見つめるわたしを、それ以上にじっと見ていたすぐ側の視線に。


「……なに?」

「んー、別に」

「……だったら見ないでよ、もう」

「ん、いや、だってね」


わたしを覗いていたハナが、ころころと笑いながら身を起こした。

軽いその動作にも、柔らかな髪はふわりと揺れる。


「今セイちゃん、この写真と同じ顔してたから」


ハナの視線が、写真の中のわたしに移る。

でもわたしは、目の前のハナを、見つめたまま。