「そうだ。きみに見せなきゃいけないものがある」
ハナがごそごそと、背負っていたショルダーバッグから青い冊子を取り出した。
だけど開いてみればそれは冊子ではなく、写真の収められたアルバム。
クリアポケットの半分くらいはもう写真が貼られていて、あとの半分は、カラのままで残っている。
「ほら、セイちゃんの」
ハナが、ちょうどアルバムの真ん中らへん、写真が入れてある部分だけで言えば後ろのほうを捲っていって、あるページを開いてわたしに見せてくれた。
ひとつの見開きにある、4枚の写真。
そのすべてが、わたしにも憶えのあるものだった。
噴水に座って上を向くわたし、同じ位置で正面を向くわたし。
それから夕日の沈む街の風景と、街と同じ色に染まったわたしの横顔。
「……おととい撮ったやつ」
「うん。セイちゃん、とても綺麗だ」
「…………」
またこいつは、恥ずかしげもなくそんなことを。
と固まるわたしのことなんてもちろんお構いなしだ。
ハナは「特にこれが」とアルバムを覗いて、一枚を指差した。
「これが俺、一番綺麗だと思うんだよね」
それは、おととい、今と同じこの場所から、夕焼けと街を見下ろしていたときの写真だ。
わたしが油断した隙にハナが横から撮ったもの。
全部に、上から薄いオレンジを重ねたみたいな色だった。
背景に映る空は、今見えている空とは全然違った色をしている。
あのときこの目で見た実際よりも、なんとなく濃い気がするのは、そういう風に撮られているからなんだろうか。
それとも、鮮やかだったはずの景色が、記憶の中で薄らいできてしまっているせいなのかも、しれないけれど。