小降りになってきた雨がぽこぽこと傘を叩いていた。
楓の下を通るときだけ、それがちょっと少なくなる。
今日も噴水は水を噴きだしてなくて、これじゃただのオブジェだなと思いながら、その前をぴちゃぴちゃと、雨の日限定の足音を立てて通り過ぎる。
公園は、こんな天気だからかこの間よりも人が居ない。とても静かで、自然の音しか聞こえなくて。
そんなわけはないのに、世界にひとり取り残されたような、そんな気になる。
くしゅ、と濡れた芝を踏む。
石畳がなくなって、緑の続くそれ以外何もない場所。
こんなに静かな今日だ。
だから特に人の集まらないこの場所には、きっと本来なら誰も居ないはずなのに。
わたしはひとりそこに来て、また、きみに見つけられる。
「こんにちは」
傘の上から降ってくる声。
踏みつけた芝から、まだ雨の降る空に向かって顔を上げる。
わたしよりも随分と高い場所。公園の隅の、小高い丘の一番上。
真っ赤な傘をくるくる回して、きみはあの日とおんなじ、晴れた顔だ。