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学校が休みの土曜日。
脇にある窓の外からはまだ小さな雨の音が聞こえている。
カーテンを開けっぱなしだったせいで、鉛色の空がベッドの中から見えていた。休みの日の朝独特の、いつもとは違う妙な雰囲気。
朝はあんまり得意じゃないから、小さい頃はいつも、休みになるとお昼まで寝ていた。
いつからこんなに早く、目を覚ますようになったんだっけ。
携帯のアラームを切りながら、そんなことを、ふいに思う。
休みの日が嫌いなのは、家に居る時間がどうしたって長くなるからだ。
わたしだけがじゃなくて。家族が。家に居るから。
だから、嫌い。
ベッドから立ったところでびくんと肩が跳ねた。
遠い1階のリビングから、お父さんとお母さんの声がした。
「だからお前が……!!」
「何よ、いつもいつも……!」
……ああ、また今日も。
息を止めて、世界から自分を消す。
ぎゅっと耳を塞いだって聞こえるから、せめて見ないようにってきつく目を瞑った。
もう顔なんて合わせなければいいのに。
合わせたって、無視しておけばいいのに。
そんなことすらできなくて、新しい今日が、昨日までと同じ、汚い色で塗りつぶされる。
服を着替えて、顔だけ洗って、できるだけ速く静かに家を出た。
ドアを開けるときに一度だけ家の中を振り返ろうとして、でもそうはしないで、家が見えなくなるところまで傘も差さずに走った。