「……セイちゃん?」
「忘れたっていいんだよ。わたしのこと」
「そんなの、嫌だよ。おれは」
「いいんだよ、大丈夫」
ハナと真っ直ぐに向き合った。
あの日、きみがわたしを見つけてくれたときとおんなじように。
でもあの日とはまったく違う。
長くはないけど短くもない日々を、あれから一緒に、生きてきた。
「消えたりしないよ。わたしがハナに会えたこと、ハナが居たからわたしが見つけたすべてのこと。
ずっと無くならないその事実が、わたしとハナが一緒に居た、証にいつまでもなるから」
そう、だって。わたしのお父さんとお母さんもそうだった。
ふたりはもう、愛し合ったことを忘れてしまったけれど、ふたりが家族でいた証はちゃんと残ってる。
わたしが居る。それが証。
「わたしが憶えてるよ。ハナと出会った日の空も、ハナがくれた言葉も、ハナの笑顔も、涙も、ぜんぶ。いつまでも」
色鮮やかに憶えてる。
忘れられるわけがないんだ。
きみと出会って世界が変わった。
見るものすべてが綺麗に見えた。
何も見えない真っ暗闇に、きみが光をくれたんだ。
わたしの星はきみ。きみがわたしの星月夜。
ぜんぶ、きみがわたしにくれたものだから。
きみが、わたしの世界を変えたから。
きみと出会って、わたしの世界ははじまった。
だから、ハナ。
「きみがくれたものすべてが、わたしにとっての宝物なんだ。ハナ、きみのことも」
たとえば世界が終わって、本当になにもかもが消えてしまったとしても。
いつまでだって、わたしは、きみのことを見失わない。
「だから恐がらなくていいよ。ハナの世界からわたしが居なくなっても、また、何度でも、わたしがハナを見つける。これからもずっと、わたしはきみと居るよ」
そう、わたしの世界に、きみがいるなら。
永遠に続いていく。はじまりを何度も繰り返して。
終わったりしないように。いつでもきみだけを探して。
わたしはきみと、また出会う。