道は途中から舗装されていなかった。

わたしたちは原付を下りて、草が踏まれてできただけの道の上を進んでいく。


その丘は随分高かった。ところどころに立った灯りが、上へ上へと誘っている。

先があまり見えない暗さで、どこが頂上かもよくわからない。

それでもわたしたちは手を繋いで、灯りの示す先へ向かった。


丘をのぼっている間は、わたしもハナも、喋らなかった。

その代わりにいろんなことを考えた。

自分のこれまでの日々のこと。そしてハナと出会ってからの毎日のこと。


変わっていく景色。気付いた心。

これからも一緒に生きていくだろう、大切な人たちの、笑顔。



少し先の明かりの下に、頂上を示す看板を見つけた。

駆け出したい気持ちを押さえながら、一歩ずつその場所へ歩いて行って。


そこに立ったところで、ふたり揃って、息を呑んだ。



見渡す限りの、足元を染める淡い秋の花。

そしてそれを照らし出す、夜空に浮かぶ、幾千の星。


「……綺麗だね」


ハナが零した声に、返事をすることさえできなかった。

圧倒されていた。

見たこともないような数の星と、丘を埋め尽くした、星の数ほどのコスモスに。


「…………」


風がふわりと駆け抜ける。

少し散った花びらが、暗闇をまた、鮮やかに飾る。