こつん、とメットとメットがぶつかった。
「……セイちゃん」
「なに!? 小さくて、聞こえない!!」
「あは……ばかだなあ、セイちゃん」
小さな、笑い声が聞こえた気がして。
それからスウッっと、息を吸いこむのがわかった。
「僕の名前は芳野葩!!」
ハナの声が、星空に響く。
「好きな子の名前は倉沢星!!」
遥か彼方。あの光る星の場所まで。
「その調子! ハナ、もっともっと!!」
「もっと!?」
「もっとだよ! 星まで届くくらいに!!」
わたしたちの声は届いていく。
「僕の名前は芳野葩!」
「わたしの名前は倉沢星!!」
「セイちゃんは叫ばないでいいんじゃないの?」
「いいじゃん別に。ハナが好きなのはわたしー!!」
「やめてよセイちゃん、恥ずかしい!」
「恥ずかしくない! ほんとのことだ!」
何度も何度も、ふたりで叫んだ。
「僕の名前は芳野葩! 好きな子の名前は倉沢星!!」
ときどきお腹の底から笑いながら、夜の道でふたり、永遠に続く空に向かって、その名前を、叫び続けた。